【タイ便り vol.7】
文学研究科日本語日本文学専攻
博士前期課程2年 德久桃花
配属先に赴任して1年が経ちました。時の流れの速さに驚きつつも、あっという間に感じられるのは、毎日が充実していたからだと思います。
【退避生活】
国境付近で発生したタイとカンボジアの軍事衝突を受け、7月末から9月の初頭まで任地を離れて首都バンコクに退避していました。このような事態を経験すると、改めて自分が不確実な環境に身を置いていることを実感します。
退避中は、ホテルで事務作業に専念することになりました。生徒たちには会えず、予定していた活動も立て続けにキャンセル。ようやく活動が軌道に乗り始めた矢先だっただけに、もどかしさと焦りが募る日々でした。
そんな中、バンコク近郊で活動しているJICA海外協力隊員の配属先を訪問する機会をいただきました。青少年活動、障害児?者支援、高齢者介護、環境教育、陶磁器、美容師、ソーシャルワーカーなど、多様な分野で活動する隊員の取り組みを知る中で気づいたことは、職種が違っても、根底で通じ合うものがたくさんあるということです。それぞれ抱える課題は異なりますが、タイ人のコミュニティの中で試行錯誤しながら挑戦する仲間の姿に、大きな刺激を受けました。
また、同じ日本語教育隊員として活動している先輩の配属先学校で開催された日本語キャンプにもアシスタントとして参加しました。タイ人教師と協力しながら、運営に奔走する先輩隊員の姿からは、多くの学びと今後の活動に繋がるヒントを得ることができ、充実した機会となりました。
退避から約1カ月後、無事に任地へ戻りました。久しぶりに配属先へ行くと、同僚の先生や日本語科の生徒たちが日本語で「おかえりなさい」と迎えてくれ、心が温かくなりました。現在は、普段通りの日常に戻り、活動も再始動しています。
退避によって一時的に活動がストップしてしまいましたが、振り返ってみると、この期間は、様々な場所から新たなインプットを得て、自身の活動を見つめ直す貴重な時間になったと感じています。それと同時に、たくさんの人に支えられていることを実感した期間でもありました。残りの任期は約半年。周囲への感謝を忘れず、学んだことを糧にしながら、引き続き活動に従事したいと思います。


【くまモンオンライン交流会の裏側】
万博体育官网庁、JICA九州、JICAタイ事務所をはじめとする各方面のご協力のもと、くまモンとのオンライン交流会を開催しました。
上述の退避を受けて、当日は熊本、JICAタイ事務所、配属先をオンラインでつなぐ形式となりました。そのため、本来は、私が配属先でサポートをしながら交流会を進めるところを、急遽同僚の先生に対応していただくことになりました。くまモンの出動時間は30分。限られた時間の中で、オンライントラブルが起きないか、スムーズに進行ができるかなど、開催に対する不安がよぎりました。
そんな時、同僚の先生がある動画を送ってくれました。映っていたのは、くまモンのダンスを一生懸命練習している生徒たちの姿です。くまモンに会える日を心待ちにしている生徒たちを見て、必ず交流会を成功させようと気合いが入りました。
当日までに、同僚の先生と何度もミーティングを重ね、司会進行の流れや、生徒の立ち位置、カメラの位置など細かい点を確認しました。生徒たちは各々の練習に加え、くまモンに喜んでもらえるようにと、手作りのイラストボードも準備しました。
そしていよいよ交流会当日。生徒が「くまモーン!」と呼び込むと、くまモンが勢いよく登場!そのかわいらしい姿に、配属先では大きな歓声が上がりました。質問コーナーでは、担当の生徒が日本語で堂々と質問し、くまモンとのやり取りを楽しみました。また、ダンスでも、練習の成果を十分に発揮することができ、くまモンも喜んでくれました。
大きなトラブルも無く、無事に交流会が終了。生徒は終了後も興奮冷めやらぬ様子でした。こんなにもキラキラとした表情の生徒を見たのは初めてで、私自身も胸がいっぱいになりました。「くまモンのファンになった!」「いつか、日本でくまモンに会いたい」という生徒の感想から、今回の交流会が、日本および熊本の文化に関する理解を深める確実なきっかけになったと感じています。
また、交流会の成功に向けて、同僚の先生や生徒たちと一致団結して頑張るという経験ができたことも、大きな収穫でした。現場にいることは叶いませんでしたが、綿密なコミュニケーションを通して、着実に準備を進められたことは、配属先との信頼関係を深めることに繋がったのではないかと思います。
改めて、本交流会の企画?運営に携わり、支えてくださったすべての方々に、心から感謝申し上げます。

